湿度

まともにしゃべったのは初めてだったんじゃないかってくらい、祖父と話した記憶は少ない。
遊びに行っても、少し顔を出して「元気でやってるだか」と聞いて終わり。祖父は一人散歩に行き、部屋にこもる。祖母とは話していたようだけれど。ただでさえ母方の祖父、そして同居してないわけだから、話す機会なんてほとんどない。
2回ほどお見舞いに行った時、なんとなく緊張した。考えてみれば、一対一で話したのは(記憶にある限り)初めてだ。恥ずかしさとか直視出来ない感じから、気づいたら職業人になっていた。
「じいやーん」と声かけ。声を強める。肩を叩いてもう一度。目線の先に顔を持って行く。あぁ、意識レベルは2桁か。思わず喉頭を見る。「嚥下してないね」そう言って、何となく、他人行儀になる。

おいおい、って自分でも思うけど、目の前の祖父がどうしたって自分に近しい人に見えないんだな。
祖母が亡くなった時は寂しくて大泣きした。でも、祖父はどうだろう。


10月からずっと言われてて、決めた覚悟もどーでもよくなって、「今は実習中だしな」とか「もうすぐ年末やし」と不謹慎にも「今は困る」と言ったりもしてた。
じいやん、ごめん。天国でばあやんとゆっくり休んで。ばあやんも、嫌がらずにじいやんと過ごすように。